第六百五十話
一般市民が行方不明となった段階では情報統制が行われて静かなものだったが、捜索に来た警察官が全員行方不明となったことで警察と軍部のいざこざが発生、それにより情報統制の柵を潜り抜けてマスゴミへと流出、世界中に知れ渡ることになった。
「馬鹿げた私達の侵略宣言を信じていなかった市民もなにかあるのではと思い始めたか」
ここに至って政府が動く――ネオ・ジオンに抗議をするという形で。
「直前までネオ・ジオンと共に行動していたのだからわからなくはないが、宣言時にネオ・ジオンとの関係打ち切りということも言及したのだしこちらにコンタクトしてもいいだろうに」
「ジオン公国の時もそうだけど、地球連邦は基本的にテロリストとは話し合う気がないから仕方ないわよ。実際テロリストと取引が成ったら脅せば話が通ると勘違いしてテロが蔓延するでしょうし」
確かにハマーンの言っていることは正しいだろう。私もアクシズで手間ではあったが資源(ジャンク)そのものは豊富にあったのでよかったが、もし研究予算に困るようならテロを行う可能性は十二分にある。
それはともかくハマーン閣下から断るにしても仲介するにしても体裁が悪い、どうにかしろという連絡を貰った。
「仕方ない。こちらからコンタクトを取るか」
「誰が対応するの?経験的には私かジャミトフかその側近あたりが妥当だけど、経験を積むために侵攻だし、別の誰かにやらせる?」
「今回はジャミトフに立ってもらう。この世界に来てからはジャミトフの側近が主軸としてジャミトフ自身は裏方に回ってもらっていたが、地球連邦にジャミトフ・ハイマンの存在を示して揺さぶりを掛ける」
「でもアレンの手で随分と若返っているから本人と認識されないんじゃない?」
「それでもプレッシャーにはなるだろう。この世界ではハイマン家はジャミトフ戦死後没落、その利権を政治家達が掠め取ったという経緯がある。ジャミトフに似ているというだけで圧力になる。なんだったらDNAでも調べさせて本人だと立証してしまえばいい」
「まぁ裏から手を回してなかったことにするでしょうけど、それでももみ消したジャミトフだったら都合の悪い人達は同時に知っちゃうわけだから効果はありそうね」
「護衛と指揮を任せることが多いプルツーには外交の経験を得るためしばらく補佐としてつける。指揮はプル22に引き継がせる。ハマーンはプル22の補助を頼む」
今までプル22はプルツーの補佐を務めてきたし、指揮そのものも執ってきた。だが、それは前線や後方などの局所的指揮が主であり、全体指揮も代理で執ることはあるが基本的に後方勤務が多いジャミトフがサポートしている。
しかし、そのジャミトフも3日、4日不眠不休で働けるような身体になったとはいえ、仕事量はかなりのもので、これからを考えれば1人に頼る仕事量ではない。