第六百五十二話
暴動が起こったと言っても所詮非武装の人間によるもので鎮圧は容易かった。
むしろ警察の格闘が非常に優れた者を発見できたことでプラスとも言える。
私の人形の実戦、量産を目指す試作機プル人形の試験として制圧を試みたが、下位ナンバーが操る人形相手だったとはいえ、2体同時に相手取って生身の人間なら重傷になるような打撃や投げ技を決めている。
プルシリーズ本人なら苦戦はしてもそんなことにはならない……と言いたいところだが、察知能力に優れているニュータイプではあるが、さすがに肉弾戦のような至近距離での戦いで完璧に対応するのは難しい。
更に言えば格闘の長年の経験は思考とは別にあり、条件反射のようなものでニュータイプの察知が遅れてしまいやすい。条件反射は殺せる威力だったとしても殺意も乗らない。故に察知能力ではなく未来予測の域に入るが新米ナンバーや下位ナンバーではその精度はお察しだ。
「しばらくは下位ナンバー達の遊び相手を任せてみるか」
もちろんタダ働きというのは私の信条に合わないのでそれ相応の報酬は用意する。
とりあえずは定期的に美味い食事を差し入れするとしよう。随分と愛妻家のようなので連れてきてやろう。きっと喜ぶことだろう。
「どこからどう見ても立派な犯罪者な台詞だな」
カミーユのツッコミに否定する要素はないのでスルーしておく。
そんな騒ぎとも言えない騒ぎとは違い、外交ルートとしてジャミトフを配置し、それが公になったことで地球連邦政府や軍の高官達は大騒ぎとなっていた。
アムロ・レイとシャア・アズナブルという前例があるのに今更何を驚くと思わないでもないが、やはり身近な存在となると話は変わってくるようだ。
予想通り偽者だとか裏切り者だとか色々と言われているが、ジャミトフが今更そんな言葉で何かを感じるわけもなく、その役割を担っている。
ただし、今まで主流派閥だったティターンズ残党から接触があるようだ。
ティターンズの実戦部隊は壊滅したが政治結社としては中心だったジャミトフが死亡したから散り散りになったり別派閥に取り込まれたりして弱くなっているが間違いなく存在する。
そんな彼らにとって別の世界のジャミトフだったとしても興味を持たずにいられるわけがない。
とはいえ、同一人物だからとこれだけ人が集められるのはジャミトフの力か。普通に考えれば同一存在ではあっても結局は別人で、つながりがない他人でしかない。そんな人物に頼ろうとするのは元々のジャミトフが優れていた証拠だろう。
「これで一応ネオ・ジオンとは手切れか」
「あのハマーンも引き入れたかったのか?」
「自分がハーレムを形成しているからと私まで巻き込まないでもらおうか」
「そういうつもりで言ったんじゃない」
「ということはあの3人に飽き足らず、ハマーン閣下まで毒牙に掛けようと?」
「カミーユ?」
「違う!違うからな?!」
そこで慌てたら疚しいことがなくても疚しいことがあると取られるぞ。ニュータイプも所詮は完全にわかり会える存在ではないのだから。