第六百五十三話
ジャミトフは外交担当になったことで忙しくなった。
連邦政府側からは拉致被害者の即刻解放、その一点張りであるがこちらは極悪非道というわけではないが手段を選ぶつもりがないので強制移住者達の救いを求める声を送りつけてやる。
目標は地球上に住む人類を宇宙へ移住させることではあるが条件次第では解放することも吝かではない。
資源を全て私達自ら入手するとなると現実的ではない。代わりに連邦が担ってくれるならいい取引だ。また捕まえればいいだけなのだからどちらが利となるかは明白だ。
とは言っても本人達がどう思うかはともかくとして命の保証は前もってしているし、テロリストと話し合いをするつもりがない以上は私達の情報を抜きに来ているだけだろうから実現するとは思えないが。
「そのあたりを可能にするのが外交というやつだ。まぁ見ておれ」
そう言ってジャミトフは3人の政治家と渡りをつけ、話し合った結果――
「さすがは組織の長だっただけはある」
表立っては不可能だが、裏からだと可能だったようだ。
資源と交換で移住者を引き渡す。どうやら何人か財界の大物の親族が紛れていたらしく、それらの引き渡しと引き換えに資源……と驚いたことに新たに人間が送られてきた。
どうやら政治家達にとって不要な、都合が悪い人間を棄てるようだ。闇が深いな。資源はどちらかというと口止め料のつもりらしい。
本来こういう手段を用いる場合はもっと信用のある存在に頼ることが普通だが、ジャミトフの交渉能力の優秀さを見せられた。プルツーもいい経験になったようで姉妹の説得や教え方などに早くも影響が出てきているようだ。もちろん一朝一夕で成果が表れるわけではないが、新たな試みは歓迎するところだ。やはりトレーニングはトレーニングに過ぎず、実践は一味も二味も違う。