第六百五十四話
どこから情報が漏れたのか大気圏を私達の艦隊が堂々と駐留していることが世間に知られ始める。
人々の一年戦争の記憶がまだ風化していない今、制空圏を握られることは不安を呼び起こす。
コロニーが降ってくる光景はそれはそれは衝撃的なものだっただろうから騒いだとしても仕方ないことだとは思う。
しかし、現状はネオ・ジオンに敗北した地球連邦は軍の立て直しと派閥の主導権争いでゴタゴタしているので見過ごされているが、それが終われば資源採取基地共々攻め込んで来る。
さすがにこれだけ大々的に宣戦布告して万単位で誘拐しているのだから何らかの動きをしなければ政治家でいられなくなる。下手をすれば地球連邦そのものが崩壊する。
「それにしても……ネオ・ジオンというのは悪役でなければ気がすまないのだろうか」
ハマーン閣下から新たに設計、開発しているMAのデータが送られてきた。
その機体はグラブロ、ビグロ、ヴァルヴァロやノイエ・ジール……私がいないにも関わらずノイエ・ジールは存在し、それの発展型というが――
「デザインに偏りが過ぎる」
怪獣のようなデザインに呆れるが、確かにグラブロやビグロの系譜であることは見て取れる。
「シャンブロ、か。地球連邦の大動脈であるシーレーンの破壊、か。目の付け所は悪くないが、問題は1機製造してしまえばネオ・ジオンの年間軍事予算が消し飛んでしまいそうな金額であることだな」
シーレーンの破壊と言ってもちまちまと船舶を破壊するだけではなく、単機による基地や港の破壊も前提にしていて、それを実現させるだけのスペックはありそうだが、どんなに高性能機であっても消耗するものであるし、戦闘というのは水物。最初の任務で撃墜されては目も当てられない。
私なら既に型落ち甚だしいがグラブロを近代化改修して使った方がコストパフォーマンスに優れていると思うが。