第六百五十八話
私達の挑発行為は連邦軍に届いたようだ。
司令部からは動かないように命令が出していた。それはそうだろうな。
私達の機体はわかりやすいため、連邦軍も確度はともかくある程度情報を得ている。少なくともレナスやシルメリアの露出させた数、その戦闘能力ぐらいは把握されている。実際戦いも起こっているのだから当然だ。
それを加味した結果が今までの静観だった。
しかし、それらの情報は上層部、基地司令よりも上の総司令部に隠蔽されている。以前私達にちょっかいを仕掛けてきた基地なら経験上知っているだろうが、今回はそれとは違う基地だ。
故に随分豪華な武装をしている犯罪組織としてしか認識されていない。
その程度の情報しか持っていないのなら至近弾すらないとはいえ、基地近郊を砲撃されて黙って見過ごすなど通常の軍人ならできるはずもない。
「情報通り航空戦力が多いな」
セイバーフィッシュ、フライマンタ、デブロック、コア・ブースターなど一年戦争から使われてきた兵器達。
しかし、航空機というものが登場してから随分経ち、革新的な技術が現れなければ発展が難しいものだ。だからこそMSを飛ばすなどという非効率なことを考えるようになるのだ。結局は単機で空戦、地上戦を熟すことができるMSの方が優れているとして現在に至っている。
何が言いたいかというとロートル機でありながらも技術は本物であり、空戦能力は馬鹿にならないということだ。
「さあ、歓迎されるというならこちらも出迎えなければならないな。ちょうどよく、対空テストを行いたかったところだ。歓迎の用意を」
(最初からそのつもりだったくせに)
とハマーンが思っているが、その通りだ。