第六十六話
さあ、ドライセンの量産だ。
と思ったらまずはガンダリウムγの量産、つまり設備の充実から始まった。
まぁそのあたりは私達はノータッチだ。
そういえば、アナハイムがコンペティションに持ってきたリック・ディアスはアクシズに贈与されたらしい。
アクシズでアナハイムがMSを必要になることはないし、だからと言って月に送るにはそれ相応に手間と資金が掛かるっから……というのがアナハイムの言い分だが、実際のところは今回のコンペティションでの失態を少しでも取り替えすための策だろう。
「そのリック・ディアスが私の手元に帰ってくるとは……運命というのはわからないものだな」
「運命なんて全く信じていないアレンにそう言われてもな」
よくわかっているじゃないか……しかし、不思議な縁だと思わなくもない。
アナハイムからの話ではこのリック・ディアスはまだ件の反地球連邦組織にすら渡していないプロトタイプと言える段階のものという。
つまり、現存する機体は少なく、運用すらまだされていない段階でデータから実体となって私の手元に戻ってくるとはな。
「ふむ、スペースドアーマーやリアクティブアーマーによって間接的に軽量化が成功、それで運動性能がドライセンより高いのか……」
ただし、それらには多少疑問が残る部分もある。
それはスペースドアーマーもリアクティブアーマーも実弾兵器に対しては有効であってもビーム兵器に対しては何の効力も……いや、リアクティブアーマーに関しては誘爆、誘爆しないにしても損傷によりミノフスキー粒子対策が外れ、誤作動による自壊などが大きくなることが想定される分だけデメリットの方が大きい。
ちなみにミノフスキー粒子は帯電性物質であるため対策されていない精密機器を誤作動させる可能性があり、ミノフスキー粒子下でも有効なレーザー式、画像認証式誘導ミサイルが実戦導入されないのはミノフスキー粒子の帯電対策を施すと大型化してしまい、コストに見合わなくなるからだ。
更に言うと当然であるがザク・マシンガンの薬莢には火薬が誤爆しないようにミノフスキー粒子対策がされている。
「結論、ジオン残党対策や(普通に実弾が使われている)大気圏内ならともかく宇宙では使い勝手が悪い機体だな」
「そうか……対連邦に作ったにしては微妙なMSということか」
「改良……いや、削る余地があるのはアナハイムも折込済みだろうさ。80%が私の設計図通りなあたりは少数試験型ということだろう」
これならアクシズに渡ったところで痛手にはならないだろうし……もしかして、今回のミスは私のせいという無言の抗議じゃないだろうな。
そういえばコンペティションはタカ派や民衆を沈める……おっと失礼、鎮めるのに役に立ったようだ。
アクシズの公的機関である兵器開発部や大企業のアナハイムのMSを抑えて民間(?)が開発したMSが採用されたことで少し熱が冷めたらしい。
このまま冷戦状態でいてくれれば私としては嬉しい限りだ。
今まで使えなかったガンダリウム系の素材が使えなかったものガンダリウムγが精錬できるようになって他の資源に余裕ができるという結果を齎された。
そうなればそろそろ採掘作業用のMSなり、量産型のMSなりを用意すべきだろう。
現在採掘作業に使っているのはガーベラ・テトラ、ジオング、リック・ディアス、ドライセンの4機と借りてきた作業用機械で行っている。
ドライセンやリック・ディアスはともかく、ガーベラ・テトラとジオングは勿体無い……というかメンテに費用が嵩むので早急にやめたいところだ。
安価な作業用と言えば思い出すのがガザCの原型であるガザAだが……あんなおもちゃではプルシリーズが納得しないだろう。
「ということでそこそこ高性能な採掘作業用MSを作ろうと思う」
「……採掘作業に高性能って必要ですか?」
「必要だ。主に作業員(プル達)のやる気のために」
「……なるほど」
ということでまずはサイコミュを載せるとして——
「え?!」
せっかくだからキュベレイの生産コストと維持コストを下げることも考えてキュベレイとの互換も——
「……」
サイコミュを載せるならやはりファンネルは必須として、削岩用に……は質量の関係で難しいし、解消するには固定させればいいが機構が複雑になり過ぎてコストが上がるので削岩した後の資源運搬に使うか。
「……」
後は将来のニュータイプ専用量産機の代用として模擬戦も行える程度に機動性と運動性を兼ね備えさせるべきか——
「ハァ」
後は……将来的にはIフィールドを——
「アレン博士」
「ん?どうした」
「Iフィールドは量産は辛いと思います。それと……それはもう既にニュータイプ専用機の量産機になってませんか?」
「…………おお」
言われてみれば確かに……無意識に目的を達成してしまうとはやはり私は天才だな。
「……このコンセプトにすると量産型キュベレイということになり、ハマーン様のキュベレイの維持費は随分軽くなるのは間違いありませんね」
「よし、では早速設計を始めるか!幸い資源はたくさんある!」
(前々から思っていたのですがアレン博士は浪費家ですね。まぁ私も人の事をいえませんけど)