第六百六十一話
「ファンネルミサイルによる奇襲で敵航空部隊64%を撃墜。シルメリア次弾装填完了、発射――の前に敵MS部隊が合流」
MSを乗せたSFSでは純粋な航空部隊とは速度が違うために遅れての登場というわけだ。
もっともシルメリア・砲戦フレームはあまり対MS戦を重視していない。
航空機に対して華々しい戦果を上げたファンネルミサイルは航空機だから撃墜できるが、航空機よりも高い防御性能を有するMSではよほど当たりどころが良くなければ撃墜は難しい。それでも中破程度が限界だ。
ミノフスキークラフトを搭載したせいで重量が増加し、対空として重要な速度の低下をさせることになった。それではいくら誘導性能を向上させたところで意味がない。そこで爆薬を減らして重量削減してなんとか実用にこぎつけた。
それのせいで対MSとしては牽制、SFSを破壊するなど補助火力にしかならない。
「とはいえ、MS戦ならばそもそもシルメリアで十分なわけだが」
敵戦力を確認したところ30機、主力はジェガン、キャノンタイプもいくらか混ざっているが特筆すべきことではない。
「待機中のシルメリアに迎撃させます」
「陽動の可能性も考慮して配分するように」
「了解です」
プルツーに代わって指揮を執るプル22に注意をしておく。
実戦の指揮は何度も経験しているので問題はないが、今回はプルツーであっても同じように注意していただろう。
なぜなら砲戦フレームは100機用意したが、それ以外のシルメリア30機と敵のMSと同数しか配備していない。
シルメリアの運用データはまだまだ足りていない上に大気圏内での戦闘、しかもMS空中戦となるとジオン公国時代のものは役に立たない。一応グフやドムに飛行タイプが存在したようだがとてもではないが参考にならない。
そういう意味では連邦の、ティターンズのデータはいいものが揃っている。変形などせずに堂々とMSをスラスターで飛ばそうとしたバイアランなど面白いな。あの形状で飛ばしても空気抵抗で速度が出ないだろうに……と話が逸れた。
データが少ない上に数で負けているとなると不確定要素が重なれば負けることもあり得る。
「砲戦フレームの状況は」
「プラン通り後退中です」
仕方ないことだが砲戦フレームの機動性はレナスに劣り、シルメリアにとって重い枷となる。量産化の目処は立っているが今失うには数が多く、計画に支障が出るため後退して改めて砲撃することになる。
実戦でもこのような運用が基本となるだろうな。