第六百六十四話
結局大尉の答えは保留、私達の下で戦わないが今まで通りデータ取りや実験、教導を行うことになった。
実質世界を見限る選択を取ったと言える。
さすがにモルモットレベルの実験体とされては辟易としても不思議ではない。
それにネオ・ジオンへの亡命は『アムロ・レイ』というネームバリューによって亡命後も命を狙われる可能性が濃厚などという言葉では甘い、確定した未来が待っている。
私もハマーン閣下に釘を差すとは言ったが、そんなことで防げると思えるほど大尉も平和ボケしていないし、私も同じだ。
故にミソロギアに留まるという選択が最も可能性が高かったが、やはり今まで命を賭して守ってきた国を切り捨てるというのは相応の覚悟が必要であり、容易い決断ではない。
ただ、大尉は教導相手であるジュドー達に多少情が移っているようだ。今までも教導をしてきたが、やはり自分が初めてMSに乗った頃のことを思い出してしまうからのようだ。
おかげで死なせないように熱の入った教導を施し、それに比するように成長しているジュドー達は大尉とはそれなりにいい関係を気づけているようだ。
軍にいた頃の大尉ならともかく、今は軍人としての肩書はなく、ミソロギアでは何らかの成長をしているならどのような教育方針や個々の活動などに口を挟むつもりはないので自由な気風が影響しているだろう。
ジュドー達が、訓練らしい訓練、学習らしい学習で効率よく成長できるとは思えない。
「とはいえ実戦投入はまだ先だがな」
本人達は実戦経験を積んで強いつもりのようだが、素質は認めるが所詮は素人の域を出ない。大尉もそれは同意している。
「プルシリーズと満足に連携ができないのも致命的だな」
むしろ連携ができないだけならまだいいが、間違いなくプルシリーズの足を引っ張ることになるだろう。