第六百七十話
パイロットの大半を返したことで準戦時体制に移行していることも重なり連邦軍の再編成は順調そのもので、先日の戦いの傷など既に無い。強いて言えば敗北が続いていることで連邦軍全体の士気が下がっているぐらいか。まぁネオ・ジオンに続いて末端だったはずの私達(組織)に返り討ちにあえば士気が下がることも当然だろう。
「これが君達の戦い方か」
連邦軍との戦闘を地球で大々的に行った事によって戦闘データの流出は避けられないので問題ない範囲で大尉に情報を提供して感想を求めた。
私達はどうしても視点が偏りが大きいので、ミソロギアに染まっていない大尉の意見はジャミトフやその側近達とは違った意味で貴重だ。
「……随分個性が出ているが……これはもしかすると自律兵器、いや、この個性は……ファンネルの類、か?」
ほう、まさかここまで看破されるとは思わなかった。
自律兵器として見破られることは想定していたが、ファンネル、つまりサイコミュによる遠隔操作を行っているとまで読まれる可能性は低いと考えていた。
「この落とされた機体と新たに駆けつけた機体が同じ癖がある……というよりもこれは1週間前に教導した中にいた奴、か?こっちの奴も見覚えがある動きだな」
大尉が指しているシルメリアと教導経験個体を照合してみると確かに合致した。
私のように蓄積したデータがあるならまだしもいくら教えを説いたとはいえ、1人に掛けた時間は極短時間、その上、この戦闘データは映像である以上はニュータイプ能力は著しく制限されている。なのによく気づいたな。
この能力は短時間で決着が付きづらいエース級同士の戦いにおいてはかなりの強みとなるだろう。時間の経過によって敵の動きを察知する精度が向上していき、優位となる。
もちろんエース級となればその能力は優れているだろうが大尉のそれはレベルが違うようだ。