第六百七十九話
連邦宇宙軍の目的は拉致された国民を救助である。だからこそ私達の本拠地であるサイド5に位置するミソロギアを攻めるのではなく、大気圏に駐留している母艦級3隻を狙うのは至極当然のことだ。
更に言えばオデッサを攻略してから母艦級は補給する様子もなく、降りた部隊もそのままであるため戦力は減んじている、と考えたようだ。
残念ながらその見積もりは甘いとしか言いようがない。母艦級はMD生産設備が存在し、資源さえあれば製造は容易い。つまり、減ったのは母艦級に積まれている資源であり、戦力そのものはその日中に補充されている。
そもそも今回の主役は有人機であってMDは添え物なのだが、それは連邦軍が知るところではないので仕方ない。
「今回は前口上なしか」
ネオ・ジオンにはあったのだが……まぁネオ・ジオンは体裁的には地球連邦と戦争していたが、一応民間人に対しての攻撃は少なかったので公には戦争とは認めないまでも戦争の様式に則っていた。
しかし、私達は戦争というより犯罪組織の取締という扱いに近いだろう。そして犯罪組織を取り締まるのに一々大義など宣言する必要はない。あるとすればhold upの一言だけだろう。
「MD、MS隊展開確認。展開タイム、ほぼ予想通り。ただし10名のパイロットが興奮状態でコクピット内で発光現象を確認」
サイコ・フレームのセキュリティ強化によって実戦投入を決定。発光現象中のサイコ・フレームの強度が上昇することがわかっているため、パイロットの生存性を高めるためにコクピット周辺に使用した影響だろう。
興奮状態にあるのは上位ナンバー、久しぶりの実戦だから興奮してしまうのはわからなくもない。むしろ問題なのは下位ナンバーだ。
今回は上位ナンバーを20人も投入する代わりに実戦経験の無い下位ナンバー30人と最も多い。一応統率兼フォロー役としてとして中位ナンバーを10人入れてあるが……。