第六十八話
あれだけ説明したがとりあえずオールドタイプでも使えるサイコミュ兵器、厳密に言えばサイコミュを研究することになった。
まずサイコミュと区別するため仮称として準サイコミュと呼ぶとする。
さて、考えられるアプローチは……サイコミュを鋭敏化、人間の脳波をどうにかして増幅させる、外科的な方法で脳波を無理やり受信する……今思いつくのはこれぐらいか。
思いつきはしたが外科的な方法はリスクと時間が見合わないので没だな。1番やってみたい方法ではあるが完成したとしてもニュータイプの発掘より難易度が高いことが予想されるからだ。
となるとサイコミュの鋭敏化、脳波の増幅のどちらかというあまりにも面白みのない方法しか残らない。
ただ、サイコミュの鋭敏化はそもそもニュータイプの能力を引き出すために今現在も研究している。
つまり、選択肢は実質1つということになる。
「脳波の増幅……か」
もし何らかの方法でそれが可能なら準サイコミュだけでなく、サイコミュ兵器をより多く、精密にコントロールし、反動も少なくすることが可能になるだろう。
そうすればキュベレイの大型機を用意し、ファンネルを充実させてると同時にIフィールドの対策としてファンネルのミサイル搭載型、もしくはミサイル化することも可能かもしれない。
「なんて考えて量産型キュベレイを作っていたらいつの間にか本家のキュベレイより高性能化してしまった件について」
「何やってるんだ。本当に何やってるんだ?」
ハマーンが問い詰めてくるが返す言葉もない。
まぁ本家のキュベレイとは言うが、あれは本来試験機をそのまま他の量産型MSとの互換を重視しつつ仕上げたある意味量産型キュベレイとも言える機体となっている。
それに比べてこの量産型キュベレイはアクシズではなく、名目としては採掘作業用MSのため私達が生産しやすいように設計している。
プルシリーズをどこまで増やすのかは未定だが、20に達することは……多分無いため、それ以下のMSを維持するだけならそれほど難しくはない。
「それはつまりアクシズの技術力が低いと言いたいのか」
「答えがわかっていて問うのは時間の無駄だろう」
組織というのは大きくなればなるほど何かに偏らせることは難しくなり、バランスを保つようになる。
バランスを保つようになれば合理性を重視して特化性を捨ててしまう。
その点、私達は小さい組織な上に生活すらも鑑みない特化した研究者と手数を補い、無欲なクローンしかいないため利益?なにそれ?趣味第一!的な経営方針である以上、一部分においてはアクシズという大きな組織を上回って当然といえば当然だ。
そんな今更なことをハマーンが知らない訳がない。
「言っておくけど実質2人しかいないような本当に必要最低限な組織が仮にも国の体を成した組織の軍事開発で上回るようなことは普通じゃないわよ」
話し方が素に戻り、ジト目でこちらを見てくるがそう言われても知らん。
「問題はハマーン、どうする?これに乗るか?」
そう、量産型キュベレイという位置づけにしたというのに本家を上回ってしまった以上、ハマーンが乗るという選択肢もある。
「……これを量産する気でいるのよね?」
「ああ、そのつもりだ」
「私の機体はアレンが作ってくれるわよね?なら今の機体のままでいいわ」
まぁ質がいいとは言え、量産機……しかも互換を持っているとは言っても30%ぐらいは私達のオリジナル部品……にいつの間にかなっていた……でできている以上、アクシズで運用するには骨が折れるだろうから正しい判断だ。
「任せておけ、ファンネルはもちろん、今考案中の中近距離戦闘武装サイコミュ制御多関節アームを——」
「それって……触手でしょ」
「………………」
「いらないわ」
「………………」
「いらないわよ?」
「………………」
「いらないからね!!」
さて、この機体に量産型キュベレイという名はあまりにもふさわしくないということでキュベレイmk-IIと名付けた。
ただ、mk-IIというには長いので略してキュベレイIIと呼ぶことが多い。
この機体は本家よりも機動性、運動性、防御性、全てにおいて20%以上上回る性能となっている。
サイコミュを数値化するのは難しいが、わかりやすいところでいうとハマーンがファンネルを使うと22機を同時使用して戦闘が可能になり、機体制御も大幅に上昇しているし、何より以前より動作が安定しているのが特徴だ。
「……これを採掘に使うなんて……悲しすぎます」
「言うな」