第六百八十八話
今まで前進こそしていたが緩慢な動作で見るからにやる気が感じられなかったキュベレイ達が加速する。
「な、なんだ急にこいつら?!動きが――」
「ファンネルだ!気をつけろ!!」
「気をつけろったって――こんな数、どうやって気をつけろってんだ」
ファンネルは元々ジオン公国が国力の差を埋めるために開発されたものである以上は対多数に強いのは当然なのだが、それにしても対多数にも限度がある。
1機のMSが搭載できるファンネルなんてたかが知れている。つまり、対多数とは言っても同時に相手をするとなるとファンネルは同時に操るのは10基程度、多くても20基。相手が部隊規模ならそれで十分ではあるが500を超えた群れを相手に20基程度のファンネルでは効果が薄い。
だが、眼の前には――いや、彼らの周囲には無数のファンネルで取り囲まれ――
「名も知らぬ兵士達よ。貴方達は運が良い。私達上位ナンバーが相手するのだから――」
合図はなかったが一糸乱れぬビームがMS部隊に降り注ぎ、頭、手、足、スラスター、ライフル、腰に付属されいるミサイル、格納されているビームサーベルなどを次々射抜かれ、結果瞬く間に丸い棺桶と呼称されたボールよりも相応しい棺桶へと変貌を遂げる。
「――命を落とすことはない。感謝すると良い」
懲罰組は余裕の無さから数を減らすことを優先していたが全機で戦うとなれば上位ナンバーが多く占めるこの駐留部隊にはかなり余裕があるため、また外交用に捕虜を求めるのは自然のことだった。