第六百九十三話
連邦のMSの開発、研究は……いや、兵器の多くはジオニックやツィマッド、MIPなどを吸収したアナハイムが担っていた。
しかし、近しいとはいえ未来の技術というアドバンテージを得ていた連邦はそれをアナハイムに渡すこともなく独占することで連邦は軍縮から軍拡へと舵を切った。
だからこそアナハイムにMSで頼ろうとするのに抵抗があったが背に腹は代えられない、と言えるぐらいには敵が強大だと連邦は未だに半信半疑ながらも理解した。
ところが――
「なんだと、アナハイムの反応が鈍い?」
「はい。関係の悪化していたとはいえ、兵器以外の取引は以前からそのままでしたから難しくはないと思ったのですが……」
「ふん、出し渋って値を吊り上げるつもりか」
「いえ、どうやらルナリアン共は我々に手を貸して奴らから狙われないか心配しているようです」
ネオ・ジオンに敗北し、ミソロギアには地上で敗北を重ねた上にオデッサを占拠され、宇宙での戦いは惨敗。
有り体に言えば連邦軍が当てにならず、ミソロギアの矛先がこちら(月)に向かないか戦々恐々としているのだ。
一応は連邦に協力したとしても宇宙に住む者は攻撃対象にしないとミソロギアは宣言しているが、そうか、なら安心だ、などと思う人間は少ない。
「ただ、地球のアナハイムは座したままでは自分達に被害が出ると我々に協力するそうです」
「ふん、独立採算制とかいう死の商人の面を隠しもしない制度も時には役に立つようだな」
独立採算制、工場毎に別会社とすることで責任を各会社に押し付けることで何か問題が(テロリストに兵器を売ったり違法な研究をしたり)発覚した時にはトカゲの尻尾切りし、そうでなければ素知らぬ顔で利を享受する。それがアナハイムの在り方だと認識され、事実でもあった。
「しかし、地球のアナハイムでは少々心許ないな」
地球のアナハイムでも兵器の製造は行っているが、それはあくまで製造。現状連邦が欲しているのは既存の兵器ではなく、新しい、キュベレイ・ストラティオティスやレナスに対抗する兵器を欲しているのだ。
「月のアナハイムとも繋がりがあることは確認できているのである程度は期待できるかと」