第六百九十四話
「ふむ、この展開はまだ先だと思っていたのだが……」
捕虜とした連邦兵の中に移住を希望する者が現れたのだ。
自分で言うのも何だがこんな得体の知れない組織が運営しているコロニーなんぞに移住希望などよほどの変人か、理由がある人間かのどちらかだろうと思っていた。
「動機がスパイという者や身内がここにいるからというのは予想の範疇だが、まさか本気で移住する者がいるとは」
上がってきた情報を見るとほとんどは一年戦争とデラーズ紛争のコロニー落としによって職を失ったり、就職先がなかったり、スペースノイド憎しなどの理由で軍人への道を進んだ者達だ。
「多くが不良軍人だが、どうなるかな」
捕虜から移住希望である以上罰を与えるが、最終的には受け入れる方針だ。
しかし、今までは最高戦力が治安を守る警察官であったが、ここに新たな最高戦力として人を殺すことが仕事の軍人。しかも大半が不良軍人となると色々と起こりそうだ。
最近はまだ原始的な社会の人間は見て楽しんでいる自分に気づき、新たな刺激となることに期待してしまう……まぁ近くに気配が多くあって楽しみにしないと気が滅入るというのもあるが。
思念を遮断する装置でも研究しようかと思うが、これを実現すると私達が、特に私が困ることになるというのが難点だ。
今はまだプルシリーズが反抗する個体が現れていないが、将来には間違いなく私に反発する個体が現れるだろう。
それに人類が辿ったようにプライバシーを必要以上に求めてくるようになるだろう。しかし、思念が遮断されるエリアが広がれば広がるほどセキュリティホールとなりかねないし、統治に支障が出るだろう
「そういえばプルツーから捕虜の見積もりが上がっていたが……早くも出し渋りか?」
初回に比べて値が下がっている。
宇宙適性の高いパイロットはティターンズに引き抜かれ、全滅しているのだから本来上乗せがあってもいいはずだが――
「なるほど」
プルツーの補足には宇宙適性の高い者のほとんどはスペースノイドであることから低く見積もられているらしい。肌や顔、経済状況などで明確な違いで差別するのはまだわかるが、住む場所が違うだけで差別するとは。
「これも大々的に発表してスペースノイドとアースノイドの対立を煽るとする、か。プルツーもわかってきたようだな」