第七百話
ニーベルン・ヴァレスティによる長距離砲撃は斉射を3射行われた。
逆に言うと一方的に攻撃ができるというのに3射しか行われなかった。
連邦軍が撤退を始めたというのもあるが、最大の要因は操縦するプルシリーズの疲弊にあった。
「うぅ、気持ち悪い」
「……修行が足らん!と言いたいところだけど、これはキツイ」
「これ、慣れるのかなぁ」
ニーベルン・ヴァレスティでの攻撃はサイコフィールドを使用しているが、それによって思念がいつも以上にパイロットへ伝達してしまい、もともとサイコフィールドを発生させるには最低でもトトオ載った精神状態でなければならない。
今回が初めての運用ということもあるし、放出しているのに感情がパイロットに伝わるとは考えておらず、不意打ちに近いもので感情をコントロールすることが難しく、むしろ3射も撃てたのは上位ナンバーだったからで、これが中位なら1射で失神、下位なら発狂していたかもしれない。それぐらいの感情が流れてきたのだ。
もっとも最初から中位ナンバー以下ではサイコフィールドは発生させられないのだからそうはならなかったわけだが。
「少なくともMSに搭載はしばらくは見送ってもらおう。遠隔操作のレナスでこれなんだから直接受けるなんて精神が死んでも不思議じゃない」
「精神が死んじゃったら戻せるのかな?さすがにアレン父さんでも無理かな?」
「レナスの羽が光るのはかっこいいんだけどね。正しく天使って感じで」
「私はかっこよさを求めて死にたくはない」
「それはそう」
「でもやっぱり白い悪魔さんには逃げられたね」
「メガ粒子を抑えている発光現象がニュータイプ相手だと察知されやすいのはテスト段階からわかっていたからな」
「私達だとまず当たらないもんね」
「ニュータイプ相手には初見殺しに過ぎないがオールドタイプには十分なようだな」
高出力のメガ粒子砲は直撃させずとも余波だけでMSを撃墜するだけの威力を発揮するため、一斉射で4機ほどを撃墜、5~6機を中破から大破にしている。
「でも私達が前線に行けばこれ以上の戦果が出せるんだからこの反動を受けてまでやるメリットがあるかは謎だよね」