第七百五話
眼の前に並ぶガンダムタイプ10機。
それぞれが違うコンセプトでありながら全て同一人物のために作られたものだ。
「これとこれはΖとΖΖ、こちらはν……それに百式、ディジェ、ジ・O、TRシリーズ、これは……GPシリーズか?……なんというか節操がないというか迷走しているというか」
連邦は今までニュータイプという存在に否定的だった。
良く言えば人類の進化、超常的存在。
悪く言えば異物、自分達を旧人類へと貶める存在。
それを認められるほど達観している人間は多くいない。特に権力者というオールドタイプの代表であり、自信こそ超越者などと勘違いしている者がいるほどなのだから当然だ。
出る杭は打つか溶鉱炉で溶かされるか新たな敵を貫くのに用いられる。
今まではジオン公国、ネオ・ジオンの猿真似でしかなかったが、敵(我々)を貫くために本格的なニュータイプ専用機を開発し始めた。
どこかの誘拐政治家もニュータイプ専用機を開発していたが、あれは未来から得た情報を現行のMSに反映させた程度でしかない。
サイコフレームは極微小のサイコミュであると同時に構造材でもあるがこれまではサイコミュを小型化した程度にしか使われていなかった。
しかし、今目の前にある10機のMSはサイコミュの発光現象、サイコフィールドを利用しようと設計されている。
もっともアムロ・レイも他の実験体も激情によって一時的に発生させることはできても任意での発生には未だに成功していないのだからソフトがハードに追いついていない……いや、ニュータイプ訓練の質を考えればハードがソフトに適応できていないという方が正確か。
「だが、さすが連邦。この短期間にこの仕上がりか」
いくら未来の知識と現物があったと言ってもそれはMSに残っていたデータと大尉の知識だけであって完全な研究データではない。
おそらくこの世界でも土台はあったからだろうが、それでも完成度が高い。
私のサイコミュとサイコフレームはミソロギアに所属のニュータイプにのみ対応させることで効率化しているが、他のニュータイプが使うとなると起動するだけで苦痛が生じるレベルで実戦などとてもではないが熟せないだろう。
それに比べて連邦のMSはアムロ・レイに合わせようとはしているが、サイコミュそのものは汎用性を捨ててはいない。そのため万人(ニュータイプに限る)向けとしては連邦のものの方が優れている……まぁ誰でも使えることがメリットかどうかはおいておくが。