第七百七話
「私達の真価を問われる時が来た」
「今こそ我々の存在を示す時」
「戦死を恐れずな。無駄死にこそ恐れよ」
「行くぞ」
48時間という短い時間で全人口の避難など無理だ。
故に連邦はできる限り周辺の軍を集めた。
敵の言う事を鵜呑みにするのはどうかと思うが、生半可な戦力では意味を成さず、だからと言って見捨てるとなれば政権交代どころか政府が崩壊する可能性まである。
しかし、ここのところの主力を担っているアムロ・レイは温存された。
専用機が軒並み強奪されたことで専用機で有利に戦えていたが、一方的な戦いにはなっておらず、量産機では万が一があっては困るために待機となった。
アレンの狙い通りである。
今回の作戦にアムロ・レイの存在は脅威であるため、行動を制限したのだ。
「皆さん、こんにちは!」
宣戦布告され、人々が混乱する中でプルシリーズの声が響き渡る。
その声は彼女達の着ているパワードスーツに内蔵されているサイコフレームによって強制的に精神に届けられ、誰もが無視できず、視線を集めることに成功した。
それは広場であったり、フェリーターミナルであったり、デパートであったり、レストランであったり――――消防署、警察署、軍事基地、役所などでも同じことが行われていた。
「私はミソロギア。無駄な抵抗をせず――このコンテナに乗っていただけたら幸いです」
後ろにあるコンテナが開き、ほら入れ、と言わんばかりの動作で示す。
その言葉を聞いても大部分の人間は理解できず、思考停止する。
もちろん例外も存在し――
「テロリストだ!取り押さえろ!」
「緊急事態!発砲を許可する!迎撃せよ!!」
この非常時に警察署や軍事基地などで悪ふざけでした、などということはテロ行為に等しいため警告もなく、攻撃を許可が出る。
幸か不幸か間違いなくそのテロリストであったので対処は間違ってはいない。
ただし、間違っていないからと言って――
「無駄な抵抗という言葉を使っているからにはこちらもそれ相応に自信があるということがわからないのでしょうか」
放たれた銃弾はパワードスーツによって弾かれ、取り押さえようと飛びかかった者達は掴まれてコンテナに放り込まれた。
「あまり抵抗しないでください。手元が狂って殺してしまうかもしれません」
――まぁ私としてはそれでも一向に構わないのですが――
今回の侵攻は、MSは助攻でしかない。
本命はプルシリーズ。つまり――歩兵による侵攻である。
「どんどん詰め詰めしちゃいましょうねー」
パワードスーツ(デザインは黒いアイアンマンをウーマンにしたイメージ)を着用したプルシリーズは触手を展開し、捕縛を開始する。
その異様な光景で危機感が湧いた民衆はパニックになりながらも逃げ始めるが一般人が逃げれるわけもない。だがしかし、いくら触手で数を増やしているとはいっても人が集まっている場所である。触手だけでは捕らえきれない。
だから――
「ああ?!私の子どもが!!」
プルシリーズが狙ったの子どもだった。
「子どもを置いて逃げ出す親なんていないという話ですが、どうでしょうね?」
「ひ、卑怯者!!」
「卑怯で手間を省けるなら喜んで受け入れますよ」
そもそもプルシリーズに一般的な価値観を振りかざしたところで非常識が常識であるミソロギアで育っているので効果はありはしない。
それにこの程度の罵声で参っていてはミソロギアで生きてはいけない。少なくとも正気を保っていられない。
「どうしますか?」
プレッシャーを放ちつつ答えを促す。
それからの反応は様々だった。
子を置いて逃げることなどできないと大人しくコンテナに入る者、己可愛さに見捨てて逃げる者、極少数ではあるが取り返そうと戦いを挑む猛者(戦闘能力という意味ではなく精神という意味で)もいた。
逃げた者は追わず、顔を記録して後々世界に向けて晒して、後悔と恨みでニュータイプに覚醒する可能性があるので放置。
大人しくコンテナに入った者も抵抗した者も結果的には子と共に収納、抵抗した者も手足を切り落とされて止血されて収納された。(コンテナ容量に限度があるため切り落としてコンパクト化するのは予定通りであったりする)