第七十一話
翌日、ハマーンからスクラップではなく、普通に資源が届いた。
これはプル達の貸出の報酬……と親衛隊のMSの製造のための予算である。
つまり、実質私達への報酬はないわけだ。
……まぁ研究ができるなら問題ない。
「というわけで完成だ」
「今回は随分早かったですね」
そもそもプル達が使う機体であるわけだからキュベレイmk-IIのデザイン変更をする程度でスペックはほぼ変わらない……というわけでもないがデチューンする分にはそれほど時間がかからなかった。
デザイン的にはキュベレイのヘッドをセンサーが内蔵してある後頭部をカットして若干厳つくしたものになっている……若干鳥に似ているような気もする。
サイズ的にはサイコミュを内蔵させるためにジオングほどではないにしても大型化させることになってしまった。
「でもいいんですか?ファンネルをあんなに減らして」
そう、この機体、ガッライ(キュベレー信仰の去勢した神官から由来)はファンネルの搭載数は4基と少ない。更にファンネルはコンテナに収納されているのではなく、両肩にはザクの右肩に着けられているシールドのようなものがあり、そこの外側に装着されている。
この機体はエネルギーも推進剤も補充する機能を持ち合わせていないため、稼働時間はキュベレイに大きく劣る。
これはプルの初期から中期ならばいざ知らず後期とこれから生まれるであろう姉妹達が多くのファンネルを同時操作なんてできるはずがないため、ハマーンに貸し出すのは交代で行わせることを考慮すればプルシリーズが全員ある程度操作ができる機体が理想ということでこのような仕様になった。
補充機能を省いたのはサイコミュをMSに内蔵することにより重量の増加やコスト削減などもあるが本命はハマーンが調子に乗って戦線に出撃し続けることを防止することにある。
親衛隊……プル達が補給のために帰投しなければならなくなれば自然とハマーンも帰投しなければならないということになる。一種の安全装置でもあるということだ。
ちなみにこのガッライという名前もハマーンから可愛くないとクレームが来たが変更は受け付けなかった。
「もっとも親衛隊のMS部隊の役割は敵を撃破することよりハマーンの護衛をすることなのだから継戦能力が多少低くても問題ないだろう」
打撃力としてはハマーンに任せればいいしな。
「でもこの機体……私達が生産する分にはキュベレイIIとコストがさほど変わらないんですよねぇ。キュベレイIIより性能が低いのに」
スミレが言うとおり、このガッライは私達が独自に生産しているキュベレイIIと同等のコストが掛かるのにカタログスペックの段階で性能が下回っているので存在意義がない機体のように感じる。
もちろん私達には存在意義はないがアクシズとしては存在意義がある。
簡単に言えばアクシズでの維持費、整備性重視した結果なのだ。
私達が独自に開発した機体であるキュベレイIIはアクシズで維持するにはかなりコスト……特に交換部品などは独自の技術を盛り込んでいるため、部品1つで一苦労だろう。
別に使われている技術は特に秘匿するつもりはないが、量産しようと思えば設備にかなり費やすことになるのでアクシズでは割に合わない。
つまり、アクシズで生産することに妥協に妥協を重ねた結果の機体がこのガッライなのだ。
……もっともこれが現役の内に実戦投入されることがあるのかは疑問だがな。
(ちなみにガッライは平たく言うとヤクト・ドーガと類似した(もしくは原型)オリジナル機体になります)
地球圏のジオン軍残党からティターンズが開発しているというヘイズルというガンダムと戦闘があったという情報がハマーンに届けられた。
戦闘があったというが、仕掛けたのはジオン残党側であり、あわよくば奪取、最低でも開発を遅らせるために破損させようという思惑で動いたようだ。
結果からいえば計画は成功。
目的であるヘイズルを中破させることに成功した……が、強襲を仕掛けたザクII3機、ドム2機が撃破され、ゲルググ2機も中破させられた。
戦略的には勝ったが戦術的には敗北したというところか。
その強襲した残存部隊には手厚い物資援助をすることが決定したらしい。
まぁ信賞必罰は何事においても基本だからな。
しかも、そのヘイズルの右脚を持ち帰り、アクシズに送るというのだからこの部隊はなかなかわかっている。
ああ、今からワクワクする。
「テンションが上ってるのはわかりますけど!触手を暴走させないでください!」
おっと、これは失礼。