第七十九話
キュベレイIIの生産より先にイリア専用機を優先させた。
イリアの実力はプル達より優れている以上、当然の結論だ。……まぁキュベレイIIの生産その気になれば1日で終わるので後回しにしても問題がないからな。
というわけでイリア専用機を開発することになった。
まずデザインだが、どうやらイリアは今までお世話になったゲルググに愛着があるようなのでベースはゲルググとすることになった。話が早くて助かる。
とりあえずイリアが最新のサイコミュでファンネルを動かせるかテストを行ったのだが、その結果は後2歩届かずといったところだ。
1歩は起動自体はできたがファンネルの動きが拙いこと、2歩は短時間の操作で反動が起こってしまうため実戦に耐えられるものではないということだ。
そういうことでファンネルは当面無しだ。
その代わりとしてファンネルではなく、以前からオールドタイプ用に開発していた有線式のファンネルを取り付けることにした。
有線式は無線式に比べ反動や操作性が小さくて済むことがプル達の試験データからわかっているしイリアでも同じ結果を得れたので搭載を決めた。
その代わり、あまり数を増やすと運動性が下がってしまうため2基だけにする予定だが、イリアがオールレンジ攻撃ができるようになれば戦いにおいては心強い存在となるだろう。
(ちなみにインコムを想像するかもしれないが、あちらはシステム的に代用してファンネルを再現していて、こちらはあくまで通信を有線で行っているだけなので厳密には違うもの)
他に追加武装などは特になく、ビームライフルの出力を向上させ、センサー範囲も広がったので射程が伸びたということぐらいだろう。
オプション装備的な意味ではキュベレイシリーズに共通して肩に装備しているフレキシブル・バインダー(肩のパット(?)が可動式になっていてスラスターが内蔵されたもの)も付けることで運動性能の底上げを行う。
主な変更点はこの2つだ。
これによりカタログスペック的にはファンネル以外はキュベレイとそれほど変わらない性能を発揮する。
この機体を見てリファインド(洗練された)ゲルググ、略してリゲルグとは誰が言ったのかなかなかに良いネーミングセンスだ。(これは表向きの理由であり、本当はハマーンがキュベレイと同じスペックだと聞いた時に、理不尽なゲルググと言い、それを略したのがリゲルグである)
しかしこの機体はまだまだ洗練されたとは言えないのだがな。
研究に没頭していたらいつの間にか地球圏間近……アムブロシアに到着していた。
長い船旅(惑星旅?)だと思っていたが、研究設備が充実していると時間など本当にすぐに過ぎてしまう……これは本当に不老不死の研究をすべきかもしれない。このままだとアッという間に年老いてしまう。
とは言っても既に血管と脳以外は培養した臓器と入れ替え、肌は張り替えれば特に問題はない……いや、いっそ蛇のように脱皮で永遠と表皮を脱ぎ捨てるようにできないだろうか。
「じゃあアレンさん、私は街に行ってきますね」
「ああ、楽しんでこい。しばらくはのんびりできる暇なんてないだろうからな」
「……嫌なこと言わないでくださいよ」
そう言いつつも街に出かけるのが楽しくて仕方ないようで無重力とは関係ない軽快な足取りでスミレはプルシリーズ2人を連れて出ていった。
ふっ、楽しみなのは今だけだろうな。スミレにはプルシリーズの社会勉強として2人を連れて街に出かけてもらうように頼んでいる。つまりプルシリーズ30人(出発前から3人追加済み)、15回も街に繰り出さなければならない。
まぁ、15回街に出かけるのは良いとして……いや、スミレは女性ではあるが、女性の前に研究者である彼女が高頻度街に出かけるというのはそれはそれで苦痛のはずだが……何よりプル達の面倒を見なければならないのだ。
プルシリーズの露出を抑えていたこともあって彼女達のテンションは街に出かけることが決定した時から最高潮で、全員目の下にクマが薄っすらと出来ている。一応彼女達は戦闘など非常事態がなければ48時間中6時間程度しか睡眠を取るだけで健康を保つことができるはずなのだが……どれだけ無茶をしたのやら。
そんなプル達の面倒をみる?物理的に振り回される映像が頭に克明と映し出されたぞ。
スミレは無事帰ってこれるだろうか……イリアにも頼むか?
「さて、こっちも情報分析しないといけないな」
アムブロシアに来てから地球圏の情報が多く集まった。
まず、ティターンズが宇宙の拠点としてサイド7にグリプス2を建設したこと……宇宙にはア・バオア・クー、ソロモンがあり、そもそもサイド7の近くにはルナツーがあるのに必要なのか疑問だが、ティターンズの圧力が更に増したのは間違いないだろう。
続いて驚いたのがエゥーゴ、しかもシャアがティターンズが開発していたヘイズルとは別系統……いや、どちらかというと汎用化した本命の機体、ガンダムmk-IIを強奪したらしい。
更に驚いたことに、設計が多少未完成とは言え、フルムーバブルフレームを実現している……その資料が手元に届いたので間違いない。このデータにより兵器開発部がフルムーバブルフレームのMS、ガルスJを完成させた。
兵器開発部にしては随分王道的な機体で、バランスが良く、劣化ザクIIIと言えるが、コストパフォーマンスが良く、設備の増設が必要ということを差し引いたとしても優れているので大量生産が決定した。
これにより、ザクIIIが一時的に生産中止となったのは余談だ。
それとシャアが言うにはニュータイプらしき少年も連れ帰ったとか……そっちのケもあったのか?
名前はカミーユ・ビダン……女みたいな名前だな。むっ、なぜか正拳突きを喰らう光景が脳裏……なぜだ?
ぜひデータを採取したいものだが、シャアが認めるわけないか。
ここまでが4ヶ月前の話である。
時間の都合上途中で切ってしまいました。
申し訳ない。