第九十七話
特に問題なくティターンズ艦体の迎撃に私達は出撃した。
そういえばいくらニュータイプで身体能力に優れいる上に訓練しているとはいえ、素人ばかりの艦でよく事故が起きないな。
アッティスは触手とサイコミュによってほぼワンマン運転が可能であるがプルシリーズも仕事をしている以上衝突事故などがあっても不思議はないが……と余計なことを考えているとティターンズ艦隊が有効射程距離ギリギリに入ったのを確認した。
「さて、以前と同じように開幕の挨拶と行くか」
メガ粒子砲の照準を……まずは艦橋を狙ってみるか?艦橋が潰れれば指揮系統が混乱……いや、もっと接近してからの方がいいな。
今の状態で艦橋を潰して混乱が生じても白兵戦が始まる頃には混乱は静まっているだろう。それなら本格的な戦闘を始めた後に混乱させた方が効果的だ。
とりあえず調整したメガ粒子砲のテストを兼ねて当てることを優先する。
「狙いは——サラミス級」
本当はアレキサンドリア級を狙うのが順当ではあるのだが、アッティスが1番警戒すべきはMS部隊でもなければメガ粒子砲でもない。
サラミス級が持つミサイルだ。
Iフィールドがある以上、ビーム兵器は無効化される。MSが持つ実弾兵器程度なら直撃を喰らってもそれほど致命傷にはならない……核武装してなければ。
ただし、艦載されているミサイルはさすがに耐えられるわけがない。
プルシリーズと私のファンネル防衛網を突破できるとは思わないが、危険なものは取り除いておくに限る。
メガ粒子砲の引き金を引く……まぁ実際に引き金があるわけではないがイメージだ。
結果は……なんと、運がいいことにミサイル発射口がある船首に命中、やはり距離があるから粒子が拡散して威力が落ちてはいたが耐ビームコーティングを貫通して装甲が融解した……サラミス級2隻が。
融解によってミサイル発射口が歪んでいるのでそれぞれ2門が使えなくなったようだ。
「むっ、ランダム回避か、味な真似を」
人の意志が介入しない、システム的な回避……これでは当てられるには当てられるだろうが今のような有効打になるか怪しい。
しかし、以前はランダム回避などしなかったが、なぜ今になって採用したのだ?思った以上のメガ粒子砲の威力だったからか?しかし、ランダム回避は回避にこそ有効ではあるが攻撃側としては微妙な代物だ。
ランダムで回避するということは乗っている人間すらも動作は予期できないため、機械的なロックや誘導兵器が無効化している現状では砲撃の命中率はほぼ皆無となる。
だからこそ操舵による回避が主流となっている……のになぜだ。
まさかニュータイプによる砲撃だと知っているのか?これが今までのように人間による操舵なら回避していても当てられるというのに、まるでわかっているかのような……もしそうだとすれば……情報漏えいか?
プルシリーズが情報漏えいなどありえないので身内を疑う必要はない。となるとアクシズかエゥーゴかアナハイムか……どこもありそうで絞れんな。
2射目は艦底を溶かし、ミサイル発射口1門潰した。なんとも運がいいな。
3射目……を放つ頃にはこちらも射程距離に入り、メガ粒子砲による砲撃が始まった。
「だが無意味」
着弾コースがいくつもあったが当然Iフィールドは正常に作動している以上、当たることはない。
まだミサイルの射程には入っていないが念のためにIフィールドの内側にシールドビットを展開するがキュベレイIIはまだ出撃させない。
3射目でメガ粒子砲を1門、4射目で艦橋の根本に命中して3分の1が融解、5射目を放とうとした時、敵艦からミサイルと共にMSの出撃を確認したのでこちらもキュベレイIIを出撃させ——
「何?」
さすがの私も予想していなかった。
まさかアレキサンドリアからガンダムタイプが出てくるとは思いもしなかった。
「ガンダムタイプ……しかも2機だと?……そういえばガンダムmk-II以外にも開発されていたという話だったな。確か……ヘイズルとか言ったか」
しかし、以前に聞いた特徴と違うようだが……いや、シュトゥッツァーを送った部隊からの報告ではこのヘイズルというのは試験部隊だという一文があったな。
特徴が違うのはそのためか。
「しかし……腕が4本あるのはともかく……外側にある腕がでかいな」
明らかに腕とは違う用途で使うものなんだろうが、何に使うんだろうな……もしかしてジオングの腕のようにメガ粒子砲を撃つのか?
もしそうだとするなら大型MSの試作機の可能性があるな。
「何にしても……是非鹵獲したい。試験用MSというのは基本的に最新のデータの山だからな」
余裕があれば、だがな。
今のところ私がしたいことはミソロギアの充実であるため優先順位ではMSの開発は割りと低めだ。
ハマーン専用機には使えそうな気がしないでもないが……Iフィールドを搭載するとどうしても大型になってしまうからな。
「おっと、そんなこと言っている場合ではないな。こちらもキュベレイIIを出撃だ」
ただし、今回は少し陣形というものを考えてみた。
今までは2機1組という運用こそしていたが、全体を見れば適当に間隔を取り、突撃していただけであることに気づいたのだ。
改めて考えると馬鹿なことをしていたな、と思うがいくら天才の私とは言っても万能ではない。そもそも天才も勉強や訓練をしてこそ天才であるのだ。
太古の昔から人間は群れを作り、それ効率よく運用するために陣を考えた。
それは部隊が宇宙になり、兵器が変わったとしても変わりないのだ……と、この前の戦いで気づいた。
「さあ、これでどうなるか……楽しみだ」
アッティスは敵と相対する形で進み、キュベレイIIは敵を包むように上下左右に展開する。
わかりやすく言うと半包囲陣というやつだな。
「キュベレイIIとファンネルによる十字砲火……耐えられるかな」