第十九話
シミュレーションの時から思っていたが、デブリなんて嫌いだ。
結論から言うとゴールはできた。できたが……ランクがDだったぜorz
宇宙って超大変。
何が大変って、宇宙には地面がない、そしてデブリは全方位からやってくる。
全方位とは言っても基本は後ろからはなかなか来ない(たまにヅダの速度を超えるデブリもあるが)から進行方向だけなんだが……下からも上からも突撃して来るんだよ。
正直、茨の園にジオン残党がいると知っても放置しても納得だ。だって進むのだけでも面倒なのに敵がどこから来るかわからないとか怖すぎる。
そしてデラーズ・フリートの皆さん、よくこんなものがあふれる中で生活してたな。尊敬するわ。そんな生活環境だからあんな絶望的な戦いができたんだなとも思う。
更に戦後のジャンク屋さんが儲かるのも納得だ。こんなゴミが蔓延していたらコロニーで安心して生活はできない。つまり安全保障に関わる職種、つまり公的機関から補助金が出るはずだ。
そして更には兵器のデブリは儲かるだろうな。
一時期日本でスマホの部品に金が使われていることで都市鉱山なんて言葉が生まれたが兵器に使われている希少金属の量はスマホなんて比にならない量だろう。それに付け加えてコロニーにもおそらくそれ相応の貴金属が使われているに違いない。まさに宇宙鉱山と言えるものだろう。
これで儲からない方がおかしい……ただし、MSよりもずっと危険な宇宙作業機によるものだから命掛けだけど。
「宇宙ってのはかなり過酷なんだな」
自然災害こそ存在しないコロニーだが、1つのデブリによって生命を脅かす大事故に繋がる。
戦前はよかっただろうけど戦中や戦後は怖かっただろうなぁ。爆発した戦艦やMSの破片が宇宙空間を疾走する。
引力に引かれて地球や月に向かう……と思ったんだけど茨の園のことを考えるとそうでもないのか?
「宇宙は地上と比べて難易度が高いなぁ。戦争序盤は宇宙が舞台なのになんで?と思ったけどチュートリアル的にはこの順が正解か。妙なところで運営も親切だよな。ほんと」
これがいきなり宇宙任務だったら間違いなく生活に困ってたと思うし、慣れない環境でストレスマッハだっただろう。
「次はザクだな。さすがに2度の醜態は晒せれない」
1番最初の任務すらCランクだったのに、今回はDランク……難易度が違うと言っても納得がいかん。リベンジだ!
うん、やっぱりザクはザクだわー。
なんというか安定感が違う。
「何より安心な耐久力だよな」
何度かわざとデブリにぶつかり……わざと、だ。決して避けきれなかったわけじゃない。わざとだ。そこを間違えるなよ?で、わざとぶつかったんだけど、警告アラートが点滅したものの、目立った被害らしい被害はなかった。
ビーム兵器には役に立たないし、ガンダリウム合金に比べたら柔らかいのはわかっているが、それでも安心感が違う。
そして現在の俺のレベルではまだザクがちょうどいいようだ。
ヅダは変にスペックが高いから無理して最善を目指すばかりに自分にも機体にも負担を掛けてしまい、結局はタイム的にも自分自身の反応速度的にもザクが最適ということのようだ。
簡単に言うとスポーツカーの速さに魅入られたけど、結局身の丈は軽四や普通車が精々だということだな。惜しい話だが。
ヅダでも宇宙は安定していたと思っていた。しかしザクに乗ってみて思ったのはヅダのスペックに振り回されていただけだったのだ。
まぁ旋回が上手くいかず、くるくる回っている段階で察したら良いのに俺も察しが悪いな。
ちなみにザクはそんなことはなかった。おかげで最初からもう少しでBだろうと思うCランク。
多分デブリにわざと当たったことでランクが下がったんだと予想している。まぁ機体の特徴を知るために仕方ないことだったんだと割り切る。
実際多くを知ることができた。
例えばMSの旋回方法であるAMBACの1つをとってもザクの方が優秀だ。ヅダの方が速度があるのだから旋回に遅れがあっても普通なのだけど、同速だった場合はザクの方が優れているのは間違いない。
その点でいうとヅダはどちらかというと戦闘機っぽい動きになる。
これはひょっとすると大きなデメリットかもしれない。
戦闘機の動きに似ているというのは連邦にとっては慣れ親しんだ動きであるということだ。対処もすぐに、それこそ戦闘中ですら思いつけるだろう。そうなると俺自身もジオンにとっても痛い損害を被る可能性が高い。
それに比べ、AMBACが優れるザクの旋回は連邦の想定外の動きだろう。
「とりあえずザクの任務を中心に——ん?知らせか」
要件は2つあった。
1つは陳情の結果だ。
ヅダの不満点をまとめたものだったが、陳情は成功と書かれていて戦力ゲージ100万を報酬として受け取った。
ただ、これには少し疑問が生まれた。
最初にコクピットに関しての不満が1日経った後に返答があったのに対して今回は3日経ってからの返答だ。
「深読みならいいんだけど……まさかヅダを冷遇しているんじゃないよな?」
もしザクの正規採用が既定路線だったりするとヅダの開発ゲージって無駄になる可能性が出てくる。
「……このあたりを諜報で……伍長程度が知れる情報か?」
諜報への投資を検討しようと思う。
そのきっかけとなるのがもう1つの知らせだ。
「まさか射撃訓練空間なんてものまで出てくるとか……これ、次の任務は射撃訓練だよな」
というか、射撃訓練空間って……俺、銃撃つの?まさか本番で撃つ機会があると?
………………いやー、さすがにMS戦闘はまだ100歩譲ってゲーム感覚で誤魔化せるけど実際に銃の撃ち合いなんて怖くてできないぞ。多分。
え、じゃあもしかして『生活』で銃って購入できたりするのか?
…………うん、普通に銃も売ってた。
拳銃に始まり、ライフル、スナイパーライフル、ショットガン……終いにはロケット・ランチャーまである。
「これって生活??『兵器』の分類になるんじゃないの?」
ついでにいえば防弾チョッキや防弾シールド、サバイバルナイフ、十手、刺又、赤外線スコープ、手榴弾、スタングレネード、地雷なんてものまである。
「……あ、『兵器』の定義は携帯できるかどうかか?」
戦車や軍用トラック、戦闘機、戦艦なんかは『生活』の購入リストには出てこなかった。
まぁこんなもの部屋に届けられても置けないんだけどな。無理矢理置かれたらその時点で俺は死亡確定だ。
どっかの泥棒一味が使っていたS&W M19コンバット・マグナムとか昔の刑事ドラマで使われていたニューナンブM60とか興味を惹かれる。撃ちたいとは思わないけど。
「でも1番興味が惹かれるのはこれだよな」
対化物戦闘用13mm拳銃「ジャッカル」……これっていいの?著作権大丈夫か運営。……そもそもガンダムでデスゲームなんて作ってるんだから問題になるはず無いけど。
でもこれ、人類が使えないんだよな。確か。なら自殺用?
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