第二十話
射撃訓練空間。
そう表現するからには射撃が可能……つまり銃が必要だ。
そして親切さのアンバランスこの運営だけど、持ち込みもできるがちゃんと初期設定的な感じで銃と弾を用意してくれていた。
「けど、なんで7.62mmアフトマート・カラシニコバ……わかりやすい呼称だとAK-47」
この銃は有名だ。
なにせ世界で1番使われている銃としてギネスに乗っているぐらいだからな。
安さ、使いやすさ、故障の少なさ、それらから来るカスタムパーツの豊富さで選ばれてるんだろうけど——
「個人的にはトミーガンがないのが納得いかない」
別に愛着があるわけじゃないけど、トミーガンのドラムマガジン仕様はザク・マシンガンのモデルとなったものだ。
良し悪しは知らないけど、こんな世界なんだからそういう遊び心がある選択肢があってもいいと思うんだ——ん?パソコンが光ってる?
『トンプソン・サブマシンガン M1927も追加配備されました』
「なんでこういうところで柔軟性を発揮するかなター子さん?!」
『てへぺろ☆(・ω<)』
カワイイから許す。(気の迷い)
いや、まぁ別に許す許さないって問題じゃないんだけどな。
あ、ちなみに射撃訓練空間は他の仕様同様に負傷無効がある上に弾薬無限なんてものまであるが、1番は銃の整備方法のチュートリアルまであるらしい。これらは自分で購入して持ち込んだ銃にも適応されるらしいという本当に妙なところで親切設計だ。
的が用意されて色々な条件のもとでのスコアなども記録されるらしく、新たな娯楽が提供されたに等しい。
……人殺しの訓練を娯楽として提供して人殺しのハードルを下げさせようとしているのかもしれない。侮れんな。運営とター子さん。
でも頼んだ俺が言うのもなんだけど、どっちも小銃なんだよなぁ。用途が被ってるから好み以外に実益がないな。ター子さんに聞かれて機嫌を損ねると大変だから口にはしないけど。
「それにしてもとうとう実戦的な訓練が出てきたな。まさかMSより先に自分自身で銃を撃つことになるとは思ってなかったけど」
しかも素人に小銃とは……いや、扱いやすさに定評があるからこそ大量生産されて正規兵からテロリストや少年兵まで使ってるんだから扱えないことはないだろうけど、やっぱり順序ってものがあると思う。
「拳銃ぐらいからにしてほしいなー」
『大丈夫だ、問題ない』
いや、その判断は俺にさせてくれよ。
まぁター子さんにおねだりしても叶った試しはないので早々に諦めて次に移る。
とは言っても悩むところだ。
射撃訓練は実になってもゲージにはならない。MSは将来必須な技術であるし、ゲージになる。
優先すべきはどちらか。
メリットだけを見れば任務をより熟す方がいいというのは間違いない。
ただし、1つの懸念を除けば、という言葉が付く。
「このスコアってのが怪しすぎる」
射撃訓練空間でのスコア……これ、ひょっとしてMSの射撃訓練の解禁条件なんじゃないかと疑っている。
無重力空間が無重力テストの条件だったんだから不思議じゃない。
そして問題なのはスコアが条件だったとしてその難易度と期限についてだ。
難易度はやってみないとわからないが、俺自身に射撃の才能がない可能性もある。そして怖いのは、任務期限だ。
これ、今までは今年一杯だった。さすがにないとは思うけど最悪、今年中に任務を出現させられなかったら任務が出現しないまま終わってしまう可能性がある。
であるならば早く手を付けておくべきか……まぁまだ1月6日なんだから焦る必要はないか。
とりあえずせっかく体験した宇宙での操縦の経験を積んだんだから続けてやっとこうってことで任務をすることにした。
ザクで無重力を5回ほど回ってきたんだが、ランクはCを4回、そして早くもBが1回。
ちなみにBランクが取れたのは無重力での機動が慣れたというより機体とコースに慣れたって感じでまだ機動には不安しか無い。
わかりやすい例えでいうと若葉マークって感じかな?いや、そのまんまだったな。
こう考えるとやっぱりBランクまでのハードルは低いな。俺自身すら拙いとわかる機動でもBランクが取れるんだから。
んー……俺は急ぎすぎてるか。よく考えたらまだ6日目だぞ?MSを乗り始めてまだ若葉マークだ。
……あ、そうか、俺のアドバンテージってここにもあったのか。
普通のジオン兵は訓練を行う時間はかなり限られているはずだ。第二次世界大戦の戦闘機乗りは訓練時間400時間程度……だったかな?少なくとも1000時間はないと思う。なら地球連邦にテロリストとして見張られ、大戦に向けて物資を備蓄しなくてはならなかったジオンの兵士達がどの程度の実機での訓練を行えただろうか。
少なくとも俺がこの1年で訓練する時間よりは短いはずだ。
「過信は禁物だけど結構なアドバンテージだよな」
開戦までこの調子で依頼が出てくれればいいんだけど。
そしてふとパソコンを見て気づいたことがある。
「いつのまにか62711381G……つまり俺の命が2つ分ストックできたな」
やっぱりザク系の任務は美味いな。スタート100万と80万の違いが大きすぎる。
そこで今回、少し贅沢品を買おうと思う……というか買った。
それは——
「炊飯ジャーだ!」
いやー、以前より肉体労働なせいで腹が減るんで米だけでも自炊しようという試みだ。ちなみに炊ける量は1升だ。
そして米は玄米で30キロを用意した。
まぁ玄米は1晩ぐらい水につけて置かないと食べづらいらしい……って玄米と一緒に入っていた美味しい玄米の食べ方というレシピに書かれてた。そんなこと知らなかったから助かった。
俺は玄米の方が栄養価が高いってだけで買ったから危なかったな。食が苦痛になったら俺の精神状態が持つかどうか怪しいぞ。
とりあえず、これで脚気の心配は減るな!……すまん、結構いい加減な知識で玄米食ってれば脚気にならない、つまり栄養があるだろう!って感じで決めた。
正直後悔してる。1日も掛かるなんて思いもしなかったぞ。そりゃ白米食べるよな。
今回は初めての玄米ってことで見送るけど、将来的には筍とかしいたけとか入れて炊いてみる予定だ。
他にも余裕ができたら鯛とかも……さすがに厳しいか?
「それにパイロットスーツ用の推進機も欲しいよなぁ」
MSを操縦してわかったあの楽さ。正直無重力空間での訓練をする気がなくなった。
なんというか面倒が無いんだよな。着地の仕方を考えるのとか。
でもアレ、40万もするんだよ……しかも推進剤別途購入ってのがきつい。
購入一覧
1升炊飯ジャー 7452
玄米30キロ 8000
残りゲージ:62695929G